For those considering a well
井戸をご検討の方へ
掘る前に、知っておいていただきたいこと
井戸は、蛇口をひねれば済むものではありません。手がかかります。保証もできません。それでも井戸を選んでよかったと思っていただくために、良いことも、そうでないことも、先にお伝えします。
01
水道と井戸は、同じ「水」ではありません
水道は、川から取った水に莫大な費用をかけて浄水処理を行い、水道管を通し、電気ポンプで各ご家庭まで送り届けているものです。蛇口をひねれば、いつでも同じ品質の水が出ます。それは、その仕組みを維持するために誰かが働き、費用が払われ続けているからです。
井戸は違います。土と砂でできた、目に見えない地層から、一本の管で水を吸い上げます。間に浄水場はありません。地面の下にあるものが、そのまま出てきます。
同じ水という言葉を使いますが、まったく別のものだとお考えください。この一点をご理解いただけるかどうかで、井戸を持ったあとの満足度が大きく変わります。
02
掘る前に、保証できないこと
正直にお伝えします。
どの深さで水が出るか、事前には確定できません。当方は公開されているボーリング資料、産総研の地質図、国土地理院の地形データをもとに事前診断を行いますが、これは「可能性の診断」であって「保証」ではありません。地層は数十メートル離れただけで変わります。
どれだけの量が出るかも、掘ってみないとわかりません。十分に出ることもあれば、思ったより少ないこともあります。
どんな水質かも、掘ってみないとわかりません。鉄分が多いこともあれば、マンガンや臭いが出ることもあります。深く掘るほど、その傾向は強まります。
どこまで掘ることになるか分からない ― その不確実さを引き受けているのが、井戸工事です。
お見積りは標準50mまでで組んでおります。この範囲であれば、浅く済んでも50mまで掘ることになっても、金額は変わりません。
50mで十分な水量が得られず、さらに深く掘り進める場合は、超過分の掘削工事費と資材費を、作業完了後にあらためてご請求いたします。当社の採掘機で掘れる限度は70mです。掘り進めるかどうかは、その時点で必ずご相談のうえ判断いたしますので、黙って掘り進めることはございません。
お見積に含まず、別途申し受けるもの
- 飲用向けの浄水システム ― 水質により仕様が変わるため、出水・水質確認後にあらためてお見積りいたします
- 砂こし器 ― 砂の量が多い場合に必要になります。出水後の状況を見て別途お見積りいたします
- 防寒・凍結対策仕様 ― 屋外設置の納まりにより必要になります。現地でご相談のうえ別途申し受けます
- 50mを超える掘削 ― 上に書いたとおりです
- 宅内への引込配管・電源工事 ― ハウスメーカー様や電気工事店様の施工範囲になる場合もあります
それでも水が出なかった場合
万一、水が出なかったときは、着手金50%のみで終了とさせていただきます。残金はいただきません。別の地点で掘り直すご希望がある場合は、あらためてご相談させてください。
浅く済んだのに、なぜ同じ金額なのか。そう思われるかもしれません。
10mの井戸も50mの井戸も、掘る手間こそ多少違いますが、工事全体の作業量はほとんど変わりません。機材と資材の準備、現場までの運搬と搬入、採掘機の設置・組み立て・調整、工事後の整地と清掃、撤収、持ち帰ってからの機材のメンテナンス ― 掘っている時間以外の工程が、井戸工事の大部分を占めています。
ですから、標準の深さまでであれば、浅く済んでも深くなっても、追加のご請求はいたしません。最初のお見積りどおりの金額です。
03
工期は、読めません
井戸工事の工期を、あらかじめお約束することができません。これも先にお伝えしておきます。
浅いところで大きな石に当たることがあります。当社の採掘機で掘り進むのに、想定以上の時間がかかることがあります。掘っている途中で井戸の内部が崩れ、砂や土が落ちてくることもあります。そうなると場所を変えて、もう一度掘り直しです。
地下を掘るということは、自然を相手にするということです。見えないものを相手にしている以上、こうしたことは起こります。
ひと月かかることもあります。
そして、一件の工事が終わってから、次にご予約いただいたお客様との日程調整に入ります。前の現場が延びれば、次の現場も動きます。順番にお待ちいただく形になりますことを、あらかじめご了承ください。
事前の地質調査を終えた段階で、その土地に最適な採掘深度と、工期の目安、費用をあらためてお知らせいたします。お約束はできませんが、見通しはお伝えします。
当方は、井戸のほかに便利屋の仕事もしております。井戸の採掘中は、できるかぎり他のお仕事をお断りして日程を空けています。それでも、急を要する別件が入ることがあります。その場合、現場を離れる日が出ますことをあらかじめご了承ください。
また、朝9時から17時までびっしり作業をする、という進め方ではありません。その日の段取りによって、始める時間も終える時間も変わります。早くから動く日もあれば、手を止めて待つ日もあります。それも含めての工期です。
進み具合と現場の状況は、その都度ご説明し、ご相談し、ご報告いたします。
小型採掘機のデメリット
- 大型機械での採掘に比べて、工期が安定しません
- 一般的な工事に比べて、割高になります
それでも当社が小型の採掘機でお請けしているのには、理由があります。
大型機械を入れれば、確かに早く、深くまで掘れます。ただしその分、ご家庭や事務所の井戸には見合わない金額になってしまいます。
当社は小型機ですが、事前の地質調査とこれまでのノウハウで、掘る場所と深さを見極めます。大型機械では高額になってしまう家庭用の井戸、事務所の井戸を、現実的な金額でお届けできるのはそのためです。
北海道には、水道の来ていない土地がまだあります。そういう場所にこそ、井戸が要ります。私たちが小型機でやっているのは、そのためです。
04
工事当日にご用意いただきたいもの
井戸工事は、お客様のご協力があってはじめて成立します。事前の現地調査で、下記を一緒に確認させていただきます。
掘削に使う水
掘削には多量の水を使います。近くから分けていただけるかどうかで、段取りが変わります。難しい場合は別の手配を相談させてください。
掘削機とトレーラーの経路
機材が敷地に入れるかどうかが第一関門です。進入経路と、養生が必要な場所を現地で一緒に確認します。
残土と泥水を置かせていただく場所
掘削で出た残土と泥水は、処分場へ運ばず現地で処理させていただくことで、運搬処分費をいただかない形をとっています。敷地内に場所が必要です。
05
水が出てから半年 ― 井戸は「育てる」もの
水が出た瞬間から、無色透明な水が出るわけではありません。
特に北海道は、火山灰が厚く降り積もった上に成り立っている土地です。砂と濁りは、必ず出ます。これは失敗ではなく、井戸というものがそういうものだからです。
井戸は、使うことで良い水になっていきます。水を汲み上げることで、井戸のまわりの細かい砂が抜け、水の通り道が整っていきます。出水後のしばらくは、出したり止めたりを繰り返して、井戸を育てていただく必要があります。
この期間は砂こし器やフィルターで砂と濁りを取り除きながら使います。フィルターの目詰まりも早い時期です。手はかかりますが、ここを越えると水は落ち着いてきます。
新築でこれから住まわれる方へ
お住まいになる前に井戸が完成する場合は、仮設の電源を取って、定期的に運転していただく必要があります。家が建つのを待ってから動かし始めるより、先に育てておいたほうが、入居後の水が落ち着いています。電源の取り方と運転の頻度は、現地でご相談させてください。
06
飲み水にするまで
生活用水と飲用水は、分けてお考えください。
お風呂や洗濯などの生活用水は、砂こしを通せばお使いいただけます。温泉のような水を楽しんでいただく感覚に近いかもしれません。
飲用としてお使いになる場合は、さらに市販の浄水器を通したうえで、飲用に適しているかどうかの水質検査を受けていただく必要があります。検査は水質が落ち着いてから、お客様ご自身で実施していただきます。
そして最も大事なことをお伝えします。水が出たあとの水の管理は、お客様ご自身で行っていただくことになります。当方は井戸を掘り、設備を整えるところまでを担います。その後の水質の確認、フィルターの交換、清掃は、井戸をお持ちの方の役目です。
もちろん、ご相談やサポートはいたします。困ったときは遠慮なくご連絡ください。ただ、蛇口をひねれば済む水道とは、まったく別の次元のものだということは、最初にお伝えしておきます。
07
一生付き合う設備として
井戸のメンテナンスと維持について
井戸は、掘って終わりではありません。
持ってから先に、必ず出てくること
- 渇水の年には、水位が下がることがあります。雨や雪の少ない年、地下水の量は減ります。
- 停電すると、水は止まります。井戸は電気ポンプで汲み上げています。「災害に強い」と言われるのは、発電機があって初めて成り立つ話です。
- 水中ポンプは消耗品です。使用状況によりますが、いずれ交換が必要になります。その費用も、先々かかるものとしてお含みおきください。
- 砂こし器の清掃とフィルター交換は、定期的に必要です。だからこそ設置場所は、人が立って作業できる、冬でも凍らない屋内でなければなりません。
- 井戸を設置したら、お住まいの自治体への届出が必要です。水質検査についても、多くの自治体が定期的な実施を求めています。
08
井戸のある暮らし ― 十年住んでみて
野島井戸工房 代表・野島の実体験から
ここからは、井戸屋である私自身の話をさせてください。数字でも技術でもなく、ただの実感です。
十年ほど前、埼玉の実家で井戸を掘りました。水道を引くのをやめて、家全体を井戸水に切り替えたのです。井戸水を、そのままお風呂とボイラーにつなぎました。
驚いたのは、お風呂です。42度から45度というかなりの高温に、一時間入っていても、まったくのぼせませんでした。
当たり前だと思っていたことが、起きなくなったのです。
なぜだろうと考えました。水道水には、消毒のためのカルキが含まれています。井戸水には、薬品が一切入っていません。体の汗腺がカルキの入ってくることを嫌がって閉じてしまい、汗を外に出しにくくなっているのではないか。それが、のぼせるということなのではないか ― 私はそう感じました。
もうひとつ変わったことがあります。石鹸を使わなくても、体がさっぱりするのです。それ以来、石鹸をほとんど使わない生活が十年続いています。体に石鹸の成分もカルキも入らない暮らしです。
いまは北海道に移り住み、自宅は借家のため井戸がありません。その代わりに、お風呂へ重曹を入れています。これも似た手応えがありました。
井戸は自然の恵みです。無色透明でも、無味でもありません。ミネラルをはじめ、さまざまな成分が水に溶け込んでいます。それでも ― いえ、だからこそ、人間の体はそれを欲しているのだと思います。おいしいと感じるのです。
もちろん、飲み水については念のため、浄水器を通したうえで水質検査をお受けになることをおすすめします。そこは慎重であるべきところです。
お断り
この節に書いたことは、代表・野島個人の体感にもとづく話です。医学的に検証されたものではなく、効果を保証するものでもありません。水の感じ方には個人差があります。また、井戸水を沸かしたお風呂は、温泉法にいう温泉ではありません。
09
それでも、井戸を選ぶということ
ここまで、正直に書いてきました。手がかかります。保証もできません。管理はご自身です。
それでも、井戸には井戸にしかないものがあります。
掘ってしまえば、水道料金はかかりません。かかるのは電気代とフィルターの交換代だけです。水道料金がこの先どう改定されようと、関係がありません。長くお住まいになるほど、その差は積み上がっていきます。
そして、自分の土地の下から水を汲む、ということ。川から引いてきた水ではなく、その場所の地層が何万年もかけて濾した水です。土地ごとに味が違います。少し鉄の匂いがする水も、慣れると悪くありません。
手をかけた分だけ、水は応えてくれます。
わからないことは、何でもお聞きください。掘る前に不安を消しておくことが、私たちの仕事の半分だと思っています。
子育てと同じで、愛しながら長いお付き合いをしていただけることを願っています。